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第186話
二年参りに行くためコートを羽織り、あたたかな家から一歩踏み出すと冷たい風が肌を刺す。
降り積もった雪を避け歩くものの足からその冷気が伝わってくる様だ。
俺も行くと意気込んでいた優登は11時を過ぎる頃には船を漕ぎ出し、ものの30分でこてんと落ちてしまった。
起こさなかったら五月蝿そうだが起こせとも言われなかったし、と歩みを進める。
コートのポケットで震える端末を取り出すと“恋人”の名前が表示されていた。
急いで画面をタップする。
「もっ、もしもし」
「…」
「あれ、先生…?」
「……」
おかしいなと画面を耳から離して覗くと後から頭にぽふんと手を置かれた。
「ぁ、」
よっ、と手を上げたのは私服の長岡だ。
何気なく毎年二年参りに行ってるとの話をしたらじゃあ俺もと話はとんとん拍子に進み、こうして逢瀬の時を儲けた。
クリスマス翌日の朝少し話したがそれ以降はメッセージアプリで少しやり取りしただけ。
1週間も経っていないが、学校でほぼ毎日顔を合わせていただけにそれだけ日が開くとなんだかすごく久しぶりな気さえする。
それに、両思いだと知って恋人として会うのははじめてだった。
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