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第187話
まだ見慣れない長岡の私服姿。
コートもスーツ用と違い雰囲気が全く違う。
ただそれだけで胸がドキドキしてしまう。
「こんばんは。
三条くん。」
「こんばんは。」
きっと顔が赤くなっているだろう。
暗くて良かった、なんて神社へと案内をする為、遠くに鐘の音を聞きながら歩みを進めた。
三条に歩幅を合わせ1歩後ろを歩く長岡をチラチラと盗み見ながら歩く道程は短い。
あまり大きくはない神社には既に沢山の人が並んでいた。
その最後尾につく。
両手はポケットにいれても、耳と鼻が冷たい。
キンと冷たい空気が澄んでいる中、除夜の鐘が響きはじめた。
厳かで年に1度しか味わえない空気。
そんな空気に自然と背筋が伸びる。
「5!4!3!2!1!
あけましておめでとう!」
「あけましておめでとうございます!」
何処からかカウントダウンが聞こえ、あちらこちらでおめでとうと飛び交う。
境内の太鼓が空気を揺らし、宮司がお祓いをはじめた。
「先生、あけましておめでとうございます。」
「あぁ、おめでとうございます。
今年もよろしくな。」
三条は幼さの残る顔で破顔一笑する。
やっぱり笑った顔が1番可愛いなと長岡は目を細めた。
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