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第212話
「お待たせー。
いきなり名前呼ばれたからビビったぁ。
先生、甘いの食べるんすか?」
「あぁ、三条が美味いって言うからな。
いくらだった。」
「丸いのが180円でデニッシュが230円す。
デニッシュ美味いですよ。」
ポケットに手が伸びると臀部の熱も消えた。
ほっとする反面冷めていく熱を寂しく感じる。
「ん?
三条、なんか顔赤くね?」
「え…そう、かな。」
ねぇ、と長岡に同意を求める田上に三条はハラハラした。
その原因は隣で真面目な顔をした教師だとは口が裂けても言えない。
「確かにそうだな。
少し触るぞ。
熱はないみたいだけど気を付けろよ。」
「はい…。」
少し屈み目を合わせ、頬を触る冷たい手。
原因は長岡自身なのにわざと煽る。
「寒かったからか?
早く教室戻ろうぜ。
じゃあ、先生失礼します。」
「ん、ありがとな。」
教室がある2棟へと消えていく2人を見送り、長岡も準備室へと足を進めた。
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