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第215話

想像以上の反応にご満悦の長岡はくつくつと笑いながら、ローテーブルに置いてあるパスケースを三条に手渡した。 「それ使って何時でもここに来て良いからな。」 使い古されたパスケースの中には無記名の交通系ICカードが入っていた。 目線を上げ、長岡を見るとふわりと空気を和らげる。 「あとこの部屋の鍵も。 俺が安心するから持ってなさい。」 きっと外で待っていた時の事を気にしているのだろう。 手の中に納められた小さな鍵は体温であたたかくなる。 「でも…、」 「でも、じゃない。 来てもらってんのに三条のご両親の金じゃ気が引ける。 鍵だって俺が安心なんだ。 持ってるだけで良い。」 頭をぽんぽんとされ、目を見て諭す様に言われる。 あたたかくなる鍵をきゅっと握りしめた。 「ありがとうございます。」

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