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第216話

パスケースのハトメに鍵を繋げる。 チャリッと手の中で小さな音をたてるそれを大切そうに眺める三条を見詰める長岡の表情はずっと柔らかいものになっていた。 「このパスケース先生が使ってたんですか?」 「あぁ。 大学ん時にな。 自分のパスケースにでもしまっとけ。 それ捨てても構わないやつだし。」 「これが良いです。」 少し擦れたその角を撫でる細い指。 その手を取り指を絡め握る。 「初々しくていじめたくなる」 「え、あ、え…?」 握る手に力が入った。 「俺も会いたいから会いに来い。 何時でもだ。」 「はい。 ありがとうございます。」 あんなきっかけが嘘の様に本当はあたたかい人だ。 三条は自分より大きな身体に抱きしめられ身を委ねた。

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