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第263話
結局清掃の時間になってもお目当ての物をもらえなかった吉田はしょげていた。
はぁ…、と分かりやすい溜息を吐いて三条の前の席で携帯を弄っている。
そんな友人を眺めながら飲みかけのペットボトルに口を付けていると教室のドアが開いた。
吉田の想い人はこちらに気が付くと小走りでやって来る。
「あ、吉田くんいた!
はいっ。
これ、あげる。」
「知佳ちゃん!?」
「これ、クラスのみんなからだよ。
あと田上くんと三条くんも。」
みんな、という言葉は聞こえてないのか嬉しそうにデレる吉田を他所に知佳ちゃんからチョコを受け取った。
義理でも嬉しい。
「ありがとう。」
「俺もありがとう。
星型可愛いね。」
「溶かして固め直しただけだけどね。
そんな喜んでもらえると私も嬉しい。」
友達が知佳ちゃんを呼ぶと、知佳ちゃんはスカートを翻し友達の元へ戻っていった。
吉田はニマニマと嬉しそうだ。
「みんなって聞こえてました?
俺達ももらったけど。」
「それでも…知佳ちゃんがくれた…っ」
吉田はPP袋に入れられたチョコを何枚か写真に収めると一つ口に運ぶ。
しあわせそうに顔を綻ばせるから、なんだかこちらまでぽかぽかした気持ちになる。
「んまーいっ!
知佳ちゃんっ!
すんげーうまいよ!」
帰り支度を済ませ教室を出ようとしてた知佳ちゃんに大きな声で伝える吉田にまた明日ねと笑って手を振って出ていった。
なんと言うか、自分の気持ちに素直になれる吉田ってすごい。
そして、羨ましい。
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