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第296話

客間から布団を持って来てベッドの隣に敷き、そこに田を上は陣取った。 ベッドの下にやましい本でも隠してたら見付かっちゃうぞと冗談を言い合いながら睡魔を待つ。 「なぁ、三条…最近さ、なんかあった?」 「え?」 「なんつーか、空気?雰囲気?が丸くなったって言うか…。 悪い意味じゃねぇぞ。 あー、言葉にすんの難しいな。」 「変わった…? 俺が?」 自覚はない。 丸くなった? 環境の変化…? もしかして長岡だろうか。 友人に視線をやれば天井を見上げていた。 あれは何時だったか。 元気がないと心配してくれたのは。 あの時もそうだったが、本当にこの友人は些細な変化を繊細に感じ取る。 三条も天井を眺めると、小さな告白をした。 「…良い事があった。」 「ふぅん」 どうでも良さそうな反応にそちらを伺うと暗がりの中、田上と目が合った。 「なんかありゃ心配だけど、雰囲気から違う。 良い事ならそれで良い。 今の丸い感じも好きだ。」 「よく見てるな。」 「ん、そうか? 三条が解りやすいんじゃね。 あ、吉田の方が解りやすいな。」 「吉田はバレバレだよな。 裏表がなくて良いよ。」 それが吉田の良い所だ。 本当に人間関係に恵まれた。 本当に。

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