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第303話
合格発表に入学案内、制服採寸、と先週の慌ただしさを引きずったまま1週間がはじまった。
同時に1、2年の登校も再開される。
長岡は洗面台の前で身嗜みを整えていく。
ネクタイを締め、ワックスで髪を整え準備を済ます。
スーツだけで良いかとコートを羽織らずゴミ袋を持って玄関を出た。
玄関を出ると一面の青天井。
遠くで山が笑っている。
頬を撫でる風はまだ冷たいが雲一つない晴天は気持ちが良い。
階下を降りると同じくゴミ袋を抱えた年配女性が旦那を見送っていた。
よく会うこの夫婦は雨の日も雪の日もこうして見送りをしている。
すっかり顔馴染みだ。
「あら、長岡さんおはようございます。
お仕事いってらっしゃい。」
「おはようございます。
行ってきます。」
ゴミを捨て駐車場へ向かう長岡に婦人は手を振った。
一人暮らしに対して寂しいと思う事はない。
炊事洗濯は面倒だと思う事はあるが自由気ままにいられるしそんなもんだろうと割り切れる。
だけども、いってらっしゃいと言ってもらえるのはやっぱり嬉しい。
実家にいた頃は当たり前過ぎて解らなかったそんな事がこの歳になってよくわかる。
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