309 / 1273
第309話
壁掛け時計は19時を回っている。
ドアの開く音にそちらを見ると英語科の教師が入って来た。
「お疲れ様です。
部活、終わられたんですか。」
「えぇ、生徒達が今日はやる気でこんな時間ですよ。
長岡先生はまだ帰られないんですか?」
「もう少しで終わりそうなので、ここだけ終わらせてから帰ります。」
英語教師はよいしょと腰掛けいそいそと帰り支度をはじめる。
鞄に私物を詰め込み、プリント類をクリップで纏め更に輪ゴムで丸めた。
「じゃあ、お先に失礼しますね。
無理しないでくださいよ。
先生が倒れちゃったら生徒達心配しますからね。」
「大丈夫ですよ。
頑丈が取り柄ですから。」
座ったばかりの椅子から立ち上がると鞄を肩にかける。
お疲れ様でしたと出ていく同輩に頭を下げ、残りの仕事に目を向けた。
どの位の時間がたったか、あらかた仕事は片付いた。
帰ろうかと立ち上がるとパキパキと空気の潰れる音がする。
腹減った
早く帰ろう
施錠をして裏口から駐車場に抜ける。
見上げれた2棟は静かで暗く、日中の印象とはガラリと違う。
生徒の声もない校舎は無機質ささえ感じられる。
晩の冷たい空気に足早に愛車に乗り込んだ。
ともだちにシェアしよう!