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第309話

壁掛け時計は19時を回っている。 ドアの開く音にそちらを見ると英語科の教師が入って来た。 「お疲れ様です。 部活、終わられたんですか。」 「えぇ、生徒達が今日はやる気でこんな時間ですよ。 長岡先生はまだ帰られないんですか?」 「もう少しで終わりそうなので、ここだけ終わらせてから帰ります。」 英語教師はよいしょと腰掛けいそいそと帰り支度をはじめる。 鞄に私物を詰め込み、プリント類をクリップで纏め更に輪ゴムで丸めた。 「じゃあ、お先に失礼しますね。 無理しないでくださいよ。 先生が倒れちゃったら生徒達心配しますからね。」 「大丈夫ですよ。 頑丈が取り柄ですから。」 座ったばかりの椅子から立ち上がると鞄を肩にかける。 お疲れ様でしたと出ていく同輩に頭を下げ、残りの仕事に目を向けた。 どの位の時間がたったか、あらかた仕事は片付いた。 帰ろうかと立ち上がるとパキパキと空気の潰れる音がする。 腹減った 早く帰ろう 施錠をして裏口から駐車場に抜ける。 見上げれた2棟は静かで暗く、日中の印象とはガラリと違う。 生徒の声もない校舎は無機質ささえ感じられる。 晩の冷たい空気に足早に愛車に乗り込んだ。

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