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第315話
手を繋いだままお互いの心音が伝わる程の距離にいる。
ただそれだけなのになんでこんなにしあわせなのだろうか。
満たされるのだろうか。
正宗さんはよくキスをしてくれる。
抱きしめてくれる。
それもすごくしあわせだし好きだけど、こうして隣にいるだけで満たされるなんてお手軽だな。
「飯食うか。
買い物も行きてぇな。
どうする?」
あーでもなと渋る長岡が言うには生徒と学校外では極力会いたくない。
そう思う教師は多く、時間帯や出掛ける先を考える先生も少なくはないらしい。
言われてみれば、学校外で先生に会う事はそうそうない。
「俺、待ってますから買い物済ませて来てください。」
「ばーか、遥登もだよ。
デートだろ。
箸とか歯ブラシまで持ってきてねぇだろ。
デートついでに買い物行くぞ。」
「デート…」
いまだ繋がれたままの手にじわじわ汗をかく。
気が付いているのかいないのか、長岡は楽しそうに笑っている。
「そ、デート。
したくねぇ?」
首を振って意志を示すと愛おしそうに目を細めた。
「じゃ、デートしようか。」
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