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第317話
色違いのマグカップと箸、使い捨ての歯ブラシ等を買い店を出た。
まだ明るい空に次はどうするか決め兼ねている。
「どっか行きたい所あるか?」
「俺は特に…。
正宗さんの行きたい所に連れて行ってください。」
長岡はそうだな…と、考えてから隣を見るとにやりと笑う。
格好良いけど、その笑みに良い意味がない事は今までで学んで来た。
「じゃあ、服買いに行くか。
はるちゃんが汚しても良い様に。
サイズの合ったやつ。」
「よごっ…あれは、不可抗力です…。」
「あ、おもらししても良いようにパンツも買おうな。」
「違います…っ!
正宗さん…っ!」
はいはいとあしらわれながら車を運転する恋人に必死に弁解するが、聞いているのか定かではない。
真剣な目と違い、口角は上がりりっぱなしだった。
そんな長岡と、近くのチェーン店でスウェットと下着、着替えを見繕う。
「あ、このセーター良いな。
春物欲しかったんだよ。」
「学生みたいですね。
若く見えます。」
「それ褒めてんのか?
こっちの色ならどうだよ。」
「若く見えます。
似合ってますよ。」
にこにこしてる三条に長岡も釣られて頬の筋肉が緩む。
ころころと変わる表情は豊かで見ていて飽きない。
やわらかな雰囲気の遥登にはやっぱり笑顔が1番似合っている。
長岡は、三条の手から服を取るとレジへと向かう。
三条は慌てて腕を引いた。
そこまでしてもらうのは甘え過ぎだ。
「俺が買います!
そこまで甘えられません。」
「学生なんだから貯金に回せ。
恋人のもん買うのもデートの醍醐味だろ。」
ただでさえ目立つ長岡に、あまり大きな声は出せない。
どうしたら、と三条は頭をフル回転させた。
「………俺の、私物、置いてください。」
長岡にだけ聞こえる様に言うと、財布を引っ込めた。
口に出してから恥ずかしさが込み上げ、長岡を見る事が出来ない。
「……部屋に帰ったら抱き潰す」
上からぽつりと声が降ってきた。
更に体温が上がる。
「あ…、えっと…じゃあ、買って来ます…。」
「あぁ、俺もこれ買うかな。」
真っ赤な顔を隠す様に下を向いたまま、逃げる様にレジへと並んだ。
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