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第336話

「遥登。」 名前を呼ばれてそちらに顔を向けると口を塞がれた。 下唇を吸われ、舐められる。 微かに苦いコーヒーの味が口に広がる。 いきなりのキスに驚き、動けずにいると真っ直ぐな目が悪戯気に細められた。 「はい、これ。」 「これ…?」 「遅くなったけどホワイトデーのプレゼント。 チョコめっちゃ美味かった。 ありがとな。」 「ありがとうございます…っ」 自分が渡したのに似た色の紙袋の中には色とりどりの飴玉が詰まった小さな瓶。 蛍光灯の光りを透してキラキラと星の様だ。 「綺麗。 食べるの勿体ない。 でも、大切に食べます!」 うわーと喜ぶ三条に長々の頬が緩む。 瓶を持ったまま手を握ってきた。 にこにこと可愛い顔が真っ直ぐに長岡を仰ぐ。 「正宗さん、ありがとうございます。」 「ん、どう致しまして。 俺こそありがとうな。」 おいで、と誘うと珍しく素直に従う遥登を隣に座らせ恋人の時間を満喫した。

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