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第351話
八の字に下がる眉に困った様なそれでいて羞恥に耐える様ななんとも言えない表情で伺ってくる遥登に、ここ数か月で色っぽい顔をするようになったなと小さく息を吐いた。
「あの、正宗さん…?」
「んー。
別に痛くねぇし大丈夫だよ。
それに、遥登が付けてくれた傷なら嬉しいよ。」
三条の前髪を掻き分け現れた額に口を寄せる。
大袈裟な位びくりと震える細い身体。
「それとも、遥登はキスマークとか付けられるの嫌か?」
「嫌じゃないです…。
でも、これは傷だし…。」
「噛み痕は?」
「…あの、…嫌じゃないです。」
「俺も。」
満足げに笑う長岡にわしゃわしゃと髪を撫でられ、手櫛で整えただけの髪はボサボサになった。
狡い…
これ誘導尋問なんじゃ…
恨めしそうに見ると楽しそうに笑っているから、まぁ良いかと思ってしまう。
「あ、そういえば、正宗さん今日は噛みませんでしたね?」
「あぁ、月曜から内科検診と身体測定だろ。
遥登が医者に見せつけたいんなら良いんだけど。」
「忘れてた…。」
「付けとけば良かった。」
くつくつ笑う長岡は、やっぱり冗談を言っているのか本気で言っているのかわからない。
とりあえず服を着てもらおう。
うん。
そうしよう。
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