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第363話

「優等生かと思えばちゃんと子供もしてたんだな。 安心したよ。」 「それを言うなら正宗さんだって授業の準備何時してるんですか。 この前の授業、すごい解りやすかったです。 テスト前の対策プリントも細かいですよね。 細かい所迄ポイント書いてあるから下手な参考書より勉強になります。 それから、教え方変えてませんか? 田上の時と吉田の時と言葉を変えてる様な気がするんですけど。」 驚いた。 授業が解りやすいと言われた事もそうだが、自分をよく見ている。 まだ手探りでがむしゃら感は拭えないと思っていただけにすらすらと出てくる感想が擽ったい。 「正宗さん…?」 「いや、照れる…な」 目の前でくりくりした目がぱちくりとした後、ふわりと破顔した。 「正宗さんが照れた…っ」 「見んな。 犯すぞ…っ」 「はじめて見ました。 可愛いです…!」 両手で頬を掴みこちらを向かせるがそれでも笑う遥登のころころとした笑顔の様に、長岡の表情も豊かになった。 大学進学を機に一人暮らしをはじめもう7年が経つが、大学時代よりも三条が部屋に来る様になってからの方がよく笑う。 仕事から帰宅してビールを飲みながら野球中継を見るつまらない大人になったはずだったが、 それは目の前で笑う年下の恋人によって変わった。 「大人をからかうな。 本当に犯すぞ。 ケツ出せ。」 「擽ったっ、もうご飯はどうするんですかっ」 その反面三条が帰宅すればがらんとしてしまうけれど、この部屋には三条のぬくもりがいくつも残っている。 半熟とろとろの目玉焼き お揃いのマグカップ セックスの色を残す寝室 笑顔で満たされたリビング 「本当に、正宗さんの授業好きですよ。」 「解ったから、その話はもう終わりだ。 肉食え。 米もだ。」 「はい。 いただきます。」 ひとつ、ひとつ、見付けてはこの笑顔を思い出す。

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