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第364話
甘いたまご焼きを口に運ぶとじっと視線を感じる。
その視線が誰のものかも分かっているし、何故なのかも知っている。
「1つ食べる?」
「いやった!
いただきまーす!」
この光景は1度や2度の事ではないし、目の前で口を開けていれば分かる。
田上は三条の弁当箱から黄色いふわふわしたたまご焼きをひょいと取り出し口へ放り投げた。
「三条の母さん本当料理上手いよな。
めっちゃ美味い。」
「それ毎回言ってるよな。」
「そん位美味いんだよ。」
冷めてもふわふわしたたまご焼きと野菜の肉巻き、海老とアスパラの炒め物、きんぴらごぼう、豆とひじきの炊き込みご飯。
今日も美味しい。
お弁当とは別におにぎりも2つ作ってもらっている。
市販の混ぜご飯だったり大きめの焼き鮭がごろっと入っていたり、祖母の漬けた酸っぱい梅干しだったり、毎日の楽しみの1つ。
「デニッシュのいちごと交換な。」
「え…?
三条くん…なんて…?」
「交換。
田上もう食っちゃったしなー。」
「ガチで…?」
「ガチ。」
にやりと笑った三条に、田上はデニッシュを見詰めた。
「いちご…」
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