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第365話
最低限の自炊はするが3食自分の作った料理は味気ない。
先輩教諭が愛妻弁当に舌鼓を打つ横で、長岡は弁当を食べていた。
近くの給食センターから弁当を頼む教師は少なくない。
値段も手頃で野菜も摂れる。
一人暮らしには力強いし、洗い物もしなくて済むのも魅力的。
以前、出前でカレーを頼んでいた先生いたが、あれは一種の拷問だ。
室内に充満するスパイスのにおいにカレーを欲してしまい 、たまったもんじゃなかった。
昼食を食べ終わり今日が提出期限のプリントに不備を見付けた長岡は当人に訂正してもらう為、一度職員室へと向かう。
ついでにと空の弁当箱を返却していると自分に近付く人影に気が付いた。
「長岡先生もお弁当だったんですか?」
にっこりと笑ってはいるが本能で感じる媚び。
わざとらしい猫なで声に嫌悪感が募る。
今年度赴任してき30手前の女教師は隠していないのかわざとらしく自分に愛想を振り撒く。
その好意に気付いているがわざと気付いていないふりをし続けていた。
「えぇ、安いですし助かってます。」
「男性の一人暮らしじゃ色々と大変でしょう。
そうだ、今度お弁当作ってきましょうか。」
「いえ、お気持ちだけで十分です。
すみません。
生徒に用事がありますので、失礼します。」
口角を上げたらだけの作り笑を貼り付ける。
自分だって頼んでばかりのくせにと内心毒を吐きながら職員室を後にした。
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