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第366話
ぱくりと三条の口に収まる真っ赤ないちご。
粉糖を纏ったそれは一噛みすると甘い果汁が口の中で溢れる。
「あ…いちご…」
「んまぁ」
「田上ー。
今日提出したプリントに不備があったぞ。」
「えー…」
教室の前扉から入って来た長岡は、無造作に寄せ集められた机の島を縫って名残惜しそうにする田上の元へ来た。
どうしたかと思う表情をしている田上とは打って変わって平穏な雰囲気の2人の間にプリントを差し出す。
プリントを受け取りどこだと不備を探す田上の頭上越しに三条へと視線がいってしまう。
ぺろりと赤い舌で指を舐めるその仕種。
ふわりと香る色香。
その視線に気付いた三条は長岡を見上げ小首を傾げた。
あの女教師とは比べる事が出来ない程、この生徒は可愛い。
「ここか。
…これで大丈夫っすか?」
「あ、あぁ。
うん。
大丈夫だ。」
再確認にプリントに目を通すと、不備は訂正されていた。
「美味そうっすよね。
こんな美味そうな弁当食っておいてガリガリなんだからおかしいっすよ。」
プリントを渡す際、長岡の視線に気が付いた田上が笑う。
運良く弁当を見ていたと思われたらしい。
視線を更に下げた先には、男子高校生らしく大きい弁当箱にぎっしりと詰まっていたであろう昼飯。
その殆どが三条の腹の中に収められていたが、ゆっくり食べる三条の弁当箱にはまだいくらか残つている。
確かに美味そうだ
こんな美味そうな飯食ってりゃすくすく育つなと納得した。
出来れば横にも育って欲しいが。
「そうだな。
体質だろうが沢山食えよ。」
「っても、先生も細いっすけどね。」
「中年腹にはなりたくねぇからな。」
「うわ。
先生の中年腹想像つかねぇ。」
長岡の中年腹を想像して笑う2人の元に飲み物を買いに行っていた吉田が戻ってくると入れ違いで長岡は教室を後にした。
すこし歩くとどっと沸く教室。
クラス替えをしてもA組は男女の仲が良く、楽しそうだ。
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