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第441話

あまり乗り気ではない三条と新道は再度スタートラインに立った。 嫌そうな顔をする2人に気付いていないのか体育教師は何故か楽しそうだ。 再試合に上級生からも下級生からも痛い程の視線を感じる。 居た堪れない… ちらりと本部テントを見遣れば長岡と、目が合った。 『再試合だって? 三条なら勝てるぞ。』 体育教師と新道とテントに行くと、教師の顔をした長岡が教師らしい言葉をかけてきた。 新道も担任に激励されている。 近隣からの応援客や卒業生達て満杯のテントから逃げる様に校舎陰に逃げ込む。 小さく息を吐くと隣に長岡がやって来て、激励する様に背中を叩いた。 そして、三条にもやっと聞き取れる位の音量で囁いた。 『ゴールに俺がいると思えば頑張れるか?』  「青軍と黒軍の再試合です。」 放送部のアナウンスに真っ直ぐゴールを見据える。 「位置について、よーい」 破裂音と共に地面を蹴り上げ一直線に駆け込む。 たった数十秒が長く感じた。 「三条っ」 「三条くん!」 呼ばれた方を振り向くと拳を上げたクラスメイト。 「再試合の結果は一着青軍、二着黒軍です。」 勝った…? はあはあと荒い呼吸で本部に視線を移すと長岡は頷きながら拍手を送っていた。 勝ったんだ…っ 「でかした2年!」 「三条ー」 順位発表を終え、応援席に戻って来た三条はもう午前の参加種目はない。 クラスメイトの応援に徹した。

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