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第501話

公務員には盆休みなんて贅沢なものはない。 とはいっても、休暇をとられる先生方は少なくはない。 嫁ぎ先に挨拶ともなれば旦那の休暇に合わせるしかないのか、女性教師の数が少ない様に感じる。 むしむしと気持ち悪い空気が漂い、日中の気持ち悪さは夜になっても変わらない。 「長岡こっちっ」 「悪い。 また待たせたか。」 「また俺らが早かっただけ。 相変わらず忙しそうだね。」 店に入るとヒラヒラと手を振る友人達。 メニューを見ていた2人の反対側に腰掛けるや否や、とりあえずビールだよね?と関川が注文を頼む。 すぐにキンキンに冷えたビールが運ばれてきた。 乾杯もそこそこに口を付ける。 日中の暑さにアルコールも進む。 渇いた身体に染み入る苦味。 注文した食事が運ばれてくるまでビールを飲みながら近状報告をしていくのも、もう毎度の事となっていた。 「てか、私服多いな…あ、盆か! 世間は盆休みか!」 気付いてしまえばなんだかやるせなくなる。 休みといってもとりわけすることがある訳でもないが、休める時は休みたい。 「今年って何連休だよ。 あー、長期休暇あったら旅行行きてぇな。 温泉地行って昼から地酒、最高。」 「あ、そういえば。 長岡んとこ修学旅行どこ?」 「沖縄。」 「良いなぁ。 そういう所の方が土産品の種類も沢山あって選ぶの楽しいよな。」 「じゃあ、俺への土産は泡盛な。 あと、琉球グラス。」 「てめぇ、自分の土産なんだったよ。」 「まりもっこりん」 貰った時はまだ売ってたのかと妙に関心してしまったが、泡盛とキーホルダーじゃ等価が合わない。 関川はお茶だの銘菓だの律儀に買ってきてくれたと言うのに。 別に銘菓が良い訳ではない。 ただ、等価交換にはならない、というだけだ。 「でも暑いだろうね。 長岡、スーツ脱ぐつもりないでしょ。 脱水しないでよ。」 「大丈夫。 適当に飲むよ。」 「関川って母ちゃんみたいだよな。」 村上はケラケラ笑いながらくいーっと黄金色を喉へと流し込んでいく。 長岡もその意見には同意だ。 現に今も空いた皿を横に退けているし気が利く。 「この前、部屋まで送ってやった俺にそういう事言うか? 階段大変だったんだよ。」 「その節は、助かったー。」 じゃれつく2人を横目に、長岡は焼き鳥に手を伸ばした。 焼き鳥の隣に並べられたつくねは黄身を着けて食べるタイプのもので、ふと頭を過るあの笑顔。 上がる口角を村上に見られ弄られた。 「やだー、長岡先生思い出し笑いですかー。 やぁーらしぃー。」 「酔っ払い、声でけぇんだよ。」 「関川ぁ、長岡がうるせぇって。 こわぁい。」 「そうだよ。 下戸のくせに飲み過ぎ。 ソフトドリンクにしなよ。」 なんだかんだ毎回こうして機会をもうけてくれる村上には感謝している。 大学を卒業しもうド新人が通じなくなった今だからこその悩みや相談をお互いし合う。 そういう友人がいるだけで気持ちが軽くなるのは皆お互い様だった。

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