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第515話
痛い
痛くない
よく解らない
でも、嬉しい
マーキングと称して噛み痕を着けられている際、長岡は三条の手を取ると薬指の根元を噛んだ。
はじめて感じる箇所への痛みに噛まれた手を見ると、まるで指輪の様な跡がくっきりと着いていた。
ちゃぷんと風呂に浸かる。
嬉しい
身体から溢れてしまったらどうしようと思う程に、その気持ちが身体中を満たす。
ちゅっと痕に口を着けると浴室の扉が開いた。
「っ!?」
「なに可愛い事してんだよ。」
「な、なんで…、洗濯するって…」
「シーツは洗濯機入れたし、俺の洗濯。
俺も入るから詰めてくれ。」
かけ湯をすると、ほらほらと三条に動く様に促し自分も湯船に浸かる。
広くもない湯船に大きな男が2人並んでは流石に狭く、長岡は三条の脇に手を入れ胡座をかいた脚の上に下ろした。
密着する素肌に体温が上がる。
「俺、もうあがりますからっ、あの…ゆっくり浸かってくださいっ」
「遥登も。
誕生日だし良いだろ?」
誕生日、と言われ大人しくなる三条に腕を回して抱き寄せた。
縄の痕にキスマーク、マーキングの噛み痕で色付いた身体は艶かしい。
ぬるいお湯に浸かっているせいか、お互いの体温の方があつく感じる位だ。
「痕付け過ぎたな。
えっろ。」
「正宗さんが付けたんじゃないですか…。」
まっすぐに自分の目を覗き込んでくる長岡の目を覗き見れず顔を背けると、クスクスと楽しそうな長岡の声が聴こえる。
ふいに親指で唇を撫でられた。
「噛むな。
切れるだろ。
意地悪し過ぎたか?」
「…違います。」
「じゃあどうした?」
「……恥ずかしい、から」
恥ずかしいと言っているのに再三キスマークを着けた肌に更に着けようと吸い付かれる。
意地悪だ。
でも…
「でも、あの…」
ちゅぅっと胸元に吸い付いている長岡が上目に見てくる。
「うれし、い、です。」
段々と小さくなっていく声に長岡は満面の笑みを浮かべた。
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