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第518話

「はる、おはようのキス。」 「待ってくださいっ。 歯磨きまだですっ。」 「真面目か。」 起き抜け早々に綺麗な顔が近付いてくる。 手で口を覆う遥登に待てを喰らった長岡は起き上がると髪をかきあげた。 大きな手から零れた髪にドキッとしてしまう。 こういうのがセクシーとか色っぽいって言うのか… かっこいい 「どうした。」 「なんでもないです…」 見とれていたことを悟られない様に顔を隠す。 顔を埋めたシーツから恋人のにおいと雄のにおいに、生々しく思い出される昨夜の情事。 「なにしてんだ。」 「う"え"っ」 うつ伏せの三条の上にのし上がると蛙が潰れた様な声が出た。 慌てて上から退く長岡がなんだか可笑しくて笑いが堪えられず、吹き出してしまう。 「わざとか? びっくりさせんなよ。 潰したかと思った。」 「わざとじゃないですよ。 ただ、ふふっ、ははっ」 「ほら、歯みがき行くぞ。 早く。」 手をひく長岡に笑みを溢しながら暑い廊下を洗面所へと歩いた。

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