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第522話
朝からの行為でぐったりした三条の目の前に冷たい麦茶の入ったマグを置くと、長岡も同じものに口を着けながら何時もの場所に座った。
三条はぽけーっと空を眺めながらも意識は鞄の中のプレゼントにあった。
怠い身体を叱咤して鞄を引き寄せ中からそれを取り出す。
くぃ、くぃ
「ん?
どうした?」
何時もの定位置ではなくソファに座る長岡の足元に座り込んでいた三条にスウェットを引っ張られ下を覗くと、まだシャワーの火照りが残る恋人の身体は微かに赤くなったままだ。
「あの、誕生日のプレゼントです。
本当は昨日渡したかったんですけど…」
「そんなプレゼントなんて気を遣わなくて良いのに。
でも、ありがとな。
すっげぇ嬉しい。」
手渡されたプレゼントは片手に収まる小さなもの。
にっこりと頷く三条の髪を撫でると、嬉しそうに頬が上がった。
ソファから降りると隣に腰をおろしラッピングを解く。
更に小さな箱を開けるとキラリと太陽光を反射して長岡の手元が光った。
「ネクタイピン?
格好良いな。
高かっただろ。
…まさか、バイト届けこれの資金とか言わねぇ?」
「バイトは修学旅行と貯金用です。
いや、バイトしたお金で買ったんですど…。」
綺麗に整えられた眉を八の字に下げた長岡は小さく息を漏らすと、ぎゅぅっと三条を抱き締めた。
「やべぇ。
すっげぇ嬉しい。
遥登が汗水垂らして稼いだ金なんだから、自分に使えば良いのに。
勉強との両立だって大変だろ。
本当にもらって良いのか?」
きつく抱き締められ、なんとか顔を肩口から出すと何度も頷く。
「そうか。
ありがとう。」
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