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第524話
「久しぶり。」
「あ、おはよー。」
1ヶ月の夏休みも終わり、学校は何時もの賑やかさを取り戻した。
思い足取りの目立つ中、また毎日担任に会えると三条の足取りは軽い。
「さーんじょうっ」
「吉田おはよう。
今日早いな。」
「夏服の知佳ちゃんを見たくて早起きした。
はー、薄着最高。」
靴を履き替えようと下駄箱を開けた所で、何時もなら始業ぎりぎりにやってくる友人が声をかけてきた。
相変わらずの友人に流石に馴れた。
裏表のない吉田は言葉も素直で時に羨ましく思う。
そして、そんな吉田をからかうのは面白い。
変態を見るような目で自分を見る三条に吉田は慌てた。
「いやっ、ほらっ、三条も男だろ!?
解るだろ!?」
「…」
「解る、だろ…?」
真っ白なワイシャツから覗く腕も、緩く開けられた胸元も、眩しい。
それは理解できるが、直接口にしてしまったらただの変態では…。
からかい半分でじと目で見ているともう一人の悪友もやって来た。
「おっはよー、なにしてんの?」
「田上っ、三条枯れてる…」
「枯れ…っ。
吉田が夏服見たいから早起きしたとか言うからだろ。
理由がやばいんだよ。」
「うわー、吉田が悪い。
引くわー。」
「田上ぃー…」
ケタケタ笑う友人としょぼくれるフリをする友人の後ろを教室に向かう。
すれ違う生徒や教師は日に焼けていたりと、改めて1ヶ月という時間の長さを理解する。
この1ヶ月、確かに勉強もしたし田上吉田とも遊んだ
だけど正宗さんと一緒に居る時間も長かったなぁ
誕生日も一緒に過ごせたし、プレゼントもちゃんと渡せたし
たのしかったな
「ところで」
「ん?」
急に小さくなった声に隣を見ると友人はにやりと口角を吊り上げた。
この笑みの時はあまり良い事がない事は、この1年半で沢山見てきている。
「夏休みはどうでしたか?
彼女といちゃいちゃしてたんですか?」
「え、」
「彼女と邪魔しちゃ悪いかなぁーってあんま誘わなかったんすけど。」
「…バイトしてた。」
「へぇ?」
にやにやと口元を緩めながら吉田の後を追う田上は自分の言葉を信じているのかいないのか。
でも、久しぶりの学校は楽しい。
三条もその後を追って階段を駆けた。
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