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第527話

学校が再開して一週間もせず、テスト週間に入った。 せっかくの三連休、何時ものなら外泊に来ていた三条もどうしようかと電話越しで迷っている。 うんうん唸る三条も可愛いとビールを飲みながら電話越しで長岡はクスクス笑う。 『どうしましょう。』 「俺からは何とも言えねぇ。 教師としては順位を落として欲しくねぇしな。」 『正宗さんとしては?』 「言わせんのか?」 うーんと唸る三条と、ご機嫌な長岡。 三条がどちらを選択しようが構わない。 ただ、会いたい気持ちは長岡も同じ。 それでもその決定権は三条自身にあるのだから沢山唸ってでも自身が納得する方を選択して欲しい。 『正直、もう少し上狙ってみたいんですよね。』 「上って、もう十分上だろ。 3人抜くのか? 向上心があるのは嬉しいけど無理はすんなよ。 身体壊したら元も子もねぇからな。」 『はい。 でも、もう少し。』 あんな毎週自分の所に来ているのに順位は入学時から殆ど一定で、今の順位だって大したものだ。 『前回の数学、ケアレスミスで点数引かれたの悔しくて…』 「聞いたよ。 そのミスがなきゃ満点だったんだってな。 先生が惜しかったって俺ん所にまで来たよ。」 『でも、会いたいですし、悩みます。』 実際、三条の集中力と学習能力の高さなら本当にトップを狙えるだろう。 あと3人なら尚更だ。 その姿をみたい自分がいる。 それは教師としての自分か、個人としての自分か。 会いたい癖にどの口が言うのだろう。 「順位上がったらご褒美かな。」 『ご褒美…』 「俺だって遥登に会いたいよ。」 電話の向こうで息を飲んだ音が聴こえた。 ぶわわっと首まで真っ赤にする三条を想像するだけでも楽しいが、やっぱり本人を見たい。 会いたい。 いくら学校で毎日会えると言っても、恋人に会いたい。 声を聴きたい。 体温を感じたい。 電話越しのもどかしさ。 『やるだけ、やってみます。 あの…また電話しても構いませんか…その、勉強中監視とかして欲しいな、と思いまして』 「ははっ、構わない。 うん。 監視してやるよ。 一緒に勉強しような。」 『はいっ。 よろしくお願いします。』

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