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第529話
遥登は夕飯を食べ終えてからも凄まじい集中力で配布されたテスト対策プリントや練習問題をこなしている。
もう2時間近く飲み物も摂らず、画面越しにじっと見ていても気が付かない。
日付はとうに三連休最終日だ。
最後に淹れたコーヒーはすっかり冷めてしまっている。
一口口に含みながら見ていると、三条が顔を上げた。
『…え、』
「気付いたか。」
『何時から見てたんですか。
て、もう3時になる!?』
「すげぇ集中力だな。
ずっと見てたのに、気付かねぇから面白かったよ。」
さっきまでの真剣な横顔から、何時もの遥登の顔に戻ると口元を隠す。
手で隠しきれない頬が赤く染まる。
三条は咳払いをひとつすると小さく呟いた。
『俺だって見たかった…』
「ん?」
『俺だって、正宗さん見たかったです。』
「どうした。
やけに素直だな。
眠いのか?」
首否する三条の顔はしっかりしていて眠そうな感じはない。
どうしたんだとソファから床に座り直した。
「今週はテストで午前放課だし、寂しいな?」
『さ、寂しいです。』
「でも今週はテストだけだし、すぐに休日になるな。
嬉しい?」
『嬉しいです。』
「俺も嬉しい。」
三条は口元を隠したまま素直に言葉を紡ぐ。
「じゃあ、休みは沢山セックスしような。」
画面越しでも解る位顔を真っ赤にした三条はこれも素直に頷いた。
すげぇ可愛いけど、どうした…?
くそ、こんな素直遥登中々見れねぇのに画面越しなんて勿体ねぇ…
『早く、会いたいです。
さっき、ちゃんと言えなかったから…その…』
なんだ
そういう事か
真面目な遥登らしい理由に長岡も頷く。
「大丈夫。
ちゃんと伝わってる。」
画面の向こうで恋人は安心した様にふにゃっと顔を緩ませた。
言葉で示さなければ伝わらない。
確かにそうだが遥登の場合は態度でも示してくる。
甘えたい時はじっと見たり、嬉しい時は顔をやわらかく緩ませる。
美味しい物を食べれば目を輝かせたり、表情を見ていれば解る事も多い。
『良かった。』
「でも、いきなりどうしたんだよ。」
『あ、おやつ食べてる時にワイドショーで気持ちは口にしないと伝わらないってやってました…。
思ってても言わなきゃ思ってないのと同じだって。
俺、あんまり好きとか口に出してなかったなって。』
「セックスん時沢山好きとか愛してるって言ってくれてんぞ。
あれ無意識か?」
『う、嘘だ。
そんな、知らないです…っ』
「じゃあ、次の休みは数えながらするか。
沢山セックスするんだろ。
楽しみだなぁ。」
まだ今日1日は休みだが、とう既に次の休日が楽しみで仕方がない。
ふるふると頭を振る三条は違う…と溢しながらもやっぱりどこか嬉しそうだった。
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