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第544話
「…ん、ぁ…?」
「起きたか?」
お昼ご飯も食べずにセックスをして消耗した体力回復に寝落ちてしまっていた三条は霞む目を擦る。
室外はすっかり日が落ち、室内はシェードランプが点いていた。
「寝て、た…。
お、はよ、ございます。
腹、減った…喉も……」
「そりゃ、あれだけ運動すればな。
なんか食うか。」
「飼い主様…」
「どうした。
まだヤり足りないのか?」
ぼんやりし過ぎていてよく解らないが、最後の方は潮やら尿やら撒き散らしながら派手にイった様な事を朧気に覚えている。
…あくまで“様な事だけ”。
するりと頬を撫でられ気持ち良さと眠気にうっとりと目を閉じるとちゅぅっと重なるあたたかな唇。
「ぁ…、っぅー…」
唇が離れそうになり思わず追い掛けると腰に鈍い痛みが走った。
あれだけ無理な体制で長い事セックスしていたのだから当たり前なのだが、腰から背中にかけてギシギシと痛む。
股関節も筋も痛い。
「…後で揉んでやる。
先にシャワー浴びるか。
汚れた布団に寝かせらんねぇから毛布かけただけだけど寒くねぇ?」
「ふと、ん…すみません」
声が喉に引っ付く様に出が悪い。
それに気が付いたのか長岡は自分が飲んでいたマグカップを手渡してきた。
まだ少しあたたかいコーヒーは甘くないが、すーっと乾いた身体に染みていく。
甘くなければ飲めなかった筈なのに、いつしか甘くないコーヒーは恋人を連想させる味になった。
美味しいとはまだ言えないけれど、好きに代わったそれをまた一口口に含む。
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