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第550話
ぐーっと伸びると節々からパキパキと空気の潰れる音がする。
午後の試合が終わってから机に身長に似合わない机に長時間齧り付いていたせいか首も腰も痛い。
肩をぐるぐると回しながら当たりを見回すと自分以外の姿がないのは昨日今日がはしめての話ではない。
文化祭に県外体験学習とまたまだ行事は盛り沢山。
その為にしなくてはいけない事も盛り沢山だった。
あー…、プリントがねぇ…
職員室か…
早く済ませて帰りたいがあと少しだけと重い腰を上げ職員室へと向かった。
「あ…長岡先生、お疲れ様です。」
「お疲れ様です。」
前扉から入室すると後方の来客席に人影があった。
今年新卒の教師は毎日てんやわんやなのか夜遅くまで残っている。
自分もそういう時があった。
何をしたら良いのか、どう処理していけば良いのか、どう授業を進めていけば生徒達が理解してくれるのか、毎日考えていた。
それらを今決して手抜きにしている訳ではなく、やり方が解ってきたというだけ。
今だって毎日帰宅してからも考える。
古典の面白さを伝えたい。
面白さを少しでも解って欲しい。
少しでも生徒達の役に立てればと。
「良かったら飲んでください。」
「あ、ありがとうございます。
すみません…。」
お昼に飲み損ねた野菜ジュースを差し出すと疲れた顔で力なく笑う顔を自分もしていたのか今になってはわからない。
だからこそ亀田は自分を気にかけてくれているのか。
本当に亀田の存在は自分にとって大きい。
そして、あの生徒も。
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