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第552話
バスケ部の活躍のお陰で勝ち進んだ試合を最後まで見終えた長岡は次の試合へと急いだ。
第一体育館より狭い第二体育館はそれだけで熱気に包まれている。
はいはいはい!と声が聞こえたかと思えば小気味良い音と共に目の前でアタックが決まった。
「あ、長岡先生。
A組負けちゃってます…。」
「3点差か。」
惜しくも圧されているA組。
それでも真剣な目でボールに食らい付く姿には、三条だけでなく芯は真面目なA組生徒達の内面が表れていた。
何事にも真っ直ぐ、真剣に楽しんでやる。
諦めていないのか楽しそうな顔でプレーしている姿にほっとしつつも、やっぱりまた一勝して欲しいと願ってしまう。
「長岡せーんせっ」
後ろからやって声をかけてきたのは女子生徒。
靴紐の色から3年生。
長岡小さく溜め息を吐きながら口を開く。
「自分のクラスの試合はどうしたんですか。」
「負けたから暇なの。
せんせ、構ってよ。」
「それなら、受験勉強した方が良いですよ。」
甘ったるいにおいにつくった様な声。
適当にあしらいながら観戦しているとそれは起きた。
丁度、三条田上吉田で出来たの三角形の間にボールが向かう。
応援に来ているA組は、あっ、と声を漏らしあ。
けれど、コート内にいるA組は諦めてなかった。
ポーンっと上がったボールと同時にドンッという音が体育館内に響く。
「三条ナイスッ」
床スレスレでボールを上げた三条はそのまま床に転がった。
そのボールをバレー部が打ち込む。
連携はバッチリだ。
バッチリだが、長岡は気が気じゃない。
あの細い身体が倒れたにしては大きな音だった。
何処か怪我でも…、そんな事が一瞬で頭を駆け回る。
「三条大丈夫か。
おい、ジャージ溶けてんじゃねぇか。」
「平気。
あと2点まで縮まった。」
「おっしゃ!」
ジャージに穴を空けながらも男前な三条にエンジンのかかるチーム。
三条は起爆剤だ。
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