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第554話

なんとか勝ち進めた。 午後から決勝戦。 ジャージに穴が開いてしまったが嬉しい。 嬉しいけど… ちらりと視線をずらせば、長身の担任とその隣から離れようとしない先輩。 未だ長岡の近くから離れない女子生徒になんだかモヤモヤしつつ友人達と体育館を出る。 後ろを歩いているであろう担任の事を考えると、トボトボと歩いている足が止まってしまう。 「先、行ってて。」 「保健室?」 「傷口洗ってくる。」 「滲みそ。 泣くなよ。」 「保健室も行ってこいよ。」 「泣かないって。」 ケタケタ笑いながら教室へと向かう友人の背中を見送ると、今来た道を戻る。 モヤモヤは消えない。 それどころか膨らむ様だ。 運動で汗をかいたせいか、肌寒いはずの廊下が気持ち良い。 それでも、気分は冴えずにいる。 トイレに入った所で、後ろから腕を掴まれると個室へと押し込まれた。 「ちょっと、来い。」 便座を下げたそこに自分を座らせると、長岡はその前にしゃがみ込んだ。 「え、な…っ!?」 「でけぇ声出すな。 痛くねぇか。」 ぺろりと舌を這わせられると、傷口が滲みる。 きゅっとジャージを握って耐えた。 「っ…」 「名誉の負傷ってか」 名誉の負傷。 名誉なんていらない。 欲しいのは… 舌を穴に挿入し舐め回されていると、まるで体内をそうされている様な感覚になってきた。 さっきとは違う意味で身体がアツい。 「は、…っ」 「それでさ…」 「…っ!?」 歓迎されざる客人に三条の身体が大きく跳ねる。 ここ…学校だった…っ 俺、なに考えてんだ 危うく流されそうになったがここは学校のトイレで、いくら人気がないと言っても利用する生徒はいる。 それも、上から覗けてしまう心許ないドアを1枚挟んだだけの空間。 「そうなんだよね。 結果は悪くないんだけどイマイチ。 そっちは? 進学先県外だっけ?」 肩に置かれた手が小さく抵抗するが、長岡は目を見たまま穴の中を舐め回して止めてくれはしない。 駄目…駄目…と首を振ってみるがこれも虚しく終わる。 やば…い きもちくなる… 「そう。 ま、隣の県だけどな。」 「…っ」 長岡から、ふわりとかおる人工の甘ったるいにおい。 口元を覆っていた手も肩に置くと、両手で引き剥がす。 モヤモヤは大きくなるばかり。 女々しいな… チュウ…ッ 「ん? 今、なんか音した?」 「え? 体育館じゃなくて?」 「気のせいか?」 精一杯のキス。 顔を真っ赤にした三条は、ふいっと顔を反らせ再度口元を手で隠した。 してから照れるならしなきゃ良いのに、自分の知らないにおいを纏う長岡に無性にキスをしたくなったのも事実。

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