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第555話

ドアの開閉音。 遠くなる足音。 長岡は口を隠す三条の手を掴み股の間に膝を着くと、噛み付く様なキスをした。 「…っ、ふ…ぅン」 水音すら漏れないようにぴったりと唇を合わせたまま口内を嬲る。 ドア1枚挟んだ向こう側に生徒がいるというのになにを煽られているのか。 逃げる舌を追い掛けてもっと深くキスをする。 「…ッ…、んン……ぅ"…、ぷはっ」 「遥登からキスしてくるなんて珍しいな。」 三条にだけ聴こえる様に耳元で囁くと、口を尖らせた。 こちらも珍しく幼い反応。 「ま…」 口を開いたかと思ったらゴソゴソとジャージのポケットを漁り、スマホを取り出す。 今さっきの事もある。 声を出さない方が賢明だ。 『正宗さんから甘いにおいがしました』 タップされる言葉。 甘いにおい。 それがなにを言っているのか長岡も理解出来る。 そしてある言葉が連想された。 三条からスマホを借り言葉を打ち込むと、メモ画面を差し出す。 『ヤキモチ?』 その言葉を見た三条は弾かれた様に長岡を見上げた。 クリクリとした目は大きく見開かれ、耳まで赤くする。 女々しいそれは嫉妬。 『可愛い恋人に嫉妬されるなんて俺も随分愛されてんな マーキングするか?』 コクンと頷く恋人には悪いが、嫉妬され悪い気はしない。 狭いトイレの個室、頬から耳、耳から後頭部へと手を滑らせるとそのまま細い身体を抱き締めた。 控え目に背中に回された腕も胸に埋める顔も、可愛くて仕方がない。 ましてや理性の強い優等生の嫉妬は、それだけ愛されていると自惚れてしまう。 「マーキングです、」 「ん、沢山してくれ。」

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