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第556話

恋人を三条と呼び、恋人から先生と呼ばれながら並んで廊下を歩く。 随分冷えてきたが、中庭の落葉樹はまだ青い。 「保健室行けよ。 破傷風になったらどうすんだ。」 「これ位平気です。 それに、それ先生が言いますか?」 散々舐めておいてそれもそうかと自傷気味に笑いながら、保健室前まで付き添う頃にはすっかり担任の顔に戻っていた。 仕方がない、なんて言葉で済ますのは好きではない。 諦めの言葉は自分を納得させ諦めさせる為の言葉でしかないから。 なら、この関係すら楽しみたい。 プレイの様な事をリアルでしているのだと思えば、可愛いものか。 「失礼します。 すみません、うちのクラスの生徒なんですが擦り剥いた様なので消毒お願い出来ますか。」 「長岡先生。 あら、体操服に穴空いちゃってる。 顎も? わかりました。 そこに座って服撒くってね。」 三条がパイプ椅子に腰掛けると長岡はお願いしますと頭を下げて退室した。 すぐさま書き物をしていた保険医が手を止め、目のの前の椅子に腰掛ける。 捲り上げたジャージから覗く膝は打った事もあり若干青くなってきていた。 皮に張り付いたジャージをピンセットで取り除かれると流石に痛かったが、消毒自体はさほどの痛みで済んだのは幸いだ。 「乾かした方が良いんだけど、もしかしてまだ試合ある?」 「あ、はい。」 「じゃあ、ガーゼ貼ろうか。 お風呂入る時に剥がしたらそのまま乾かしてね。 顎はどうしよう。 湿布いるなら出すよ。」 「大丈夫です。 あの、目立ちますか?」 保険医はそんな事ないわよとサージカルテープでガーゼを押さえていく。 保険医の白く華奢な指。 恋人のものとはまったく違うそれをマジマジと見る機会などそうそうない。 正宗さんの手はもっと大きくて節が太くて、チョークのせいか少し荒れてるけど好きだな… おの大きな手で抱き締められた時を思い出すとふわふわとした気持ちになってくる。 次の試合も頑張ろう 「はい、おしまい。」 「ありがとうございました。」 「いいえ。 次の試合も頑張ってね。」 三条はさっきよりも軽い足取りで教室へと急いだ。

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