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第557話
三条が部屋を訪れる様になってから休日2人で食べる食事を長岡も楽しみにしていた。
1人だと味気ない食事も2人なら美味しい。
それが、三条となら殊更だ。
「大変よく頑張りました。」
目の前で美味しそうな湯気をたてる鍋。
野菜に肉、豆腐にきのこが美味そうにくつくつと煮えている。
「でも…、優勝出来ませんでした…。」
「頑張ったよ。
頑張りは勝ち負けだけで評価するものじゃねぇ。
それに俺は勝ったらとは言ったが優勝したらなんて一言も言ってねぇよ。」
結局あの後の試合は負けてしまい三条達は4位になった。
バスケの方はバスケ部員の活躍もあり、2位。
せめて3位入賞に入りたかったと悔しがるチームだが、大健闘だ。
甚六かと思えば中身は意外と負けず嫌いの三条は約束が違うと話す。
真面目というか頭が固いというのか、やわらかな見た目からは少し想像しずらい内面だが、三条なりの芯があってそれしっかりと貫いている様は真っ直ぐで三条らしい。
床に座り鍋をよそう長岡の目を見ようとはせず悄気ていた。
何時もなら飛び付く様な反応が見れないのも珍しい。
「そりゃ、優勝出来たら嬉しいな。
でも楽しかったんだろ。」
「…楽しかったです。」
「それで良いんだ。
行事なんて楽しめりゃ充分だ。
俺も観てて楽しかった。」
成績や単位だって関係しなくもないが、そういう機会がなければ生徒達の違った一面が見れないのもまた事実。
楽しそうにスポーツに励む姿は、去年よりまた楽しそうで観戦していた長岡も楽しかった。
わしゃわしゃと髪を掻き回しながらやっと自分の方を向いた目を見る。
長岡の好きな三条の目だ。
「ほら、沢山食って来年は優勝してくれ。」
「はい…っ」
長岡が笑顔でそう言うと三条もやっと笑った。
「いただきます。」
「あ、よく冷ましてから食えよ。」
素直にふーふーと冷ましてから口にすると、三条は美味しいととびきりの笑顔を見せた。
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