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第576話

「うまそー。」 「三条甘いのもん好きだもんな。 あ、三条ライチあるぞ。」 「ライチ好き。 あー、でも最初はケーキかな。」 「あ、三条くんもケーキ? そのいちごタルト美味しかったよ。」 横から声をかけてきて知佳ちゃんに迷わずいちごタルトを取る。 それからチョコレートケーキにチーズケーキ、モンブラン。 「三条くん相変わらずよく食べるね。 なのになんでその体型なの? 胃下垂?」 「うん。 胃下垂だけど、特に困った症状もないんだよね。 食べるの好きだしむかつきとかあったら困る。」 「そっか。 痩せてるのは羨ましいけど、胃下垂って大変だもんね。」 食べるのは好きだし沢山食べられるのは嬉しいけれど、胃下垂だと栄養吸収も良くないし良い事はない。 よく心配されるのはそのせい。 「あ、パンナコッタあるよ。 三条くんも食べる?」 「食う。 吉田は?」 「た、食べるっ!」 隣で痛い程視線を寄越してきていた吉田にも声をかけるとうんうんと何度も力強く頷いた。 そんな友人を見て、随分と伸びた髪の毛を揺らして知佳ちゃんは笑う。 視界の端にいる吉田はその顔を見て表情をやわらかくした。 本当に好きなんだと分かるその顔に、なんだがむず痒くなる。 いちごソースのかかったそれをお皿に乗せるとじゃあねと知佳ちゃんは自分の席へと戻っていった。 「三条ありがとう。 パンナコッタ…可愛い……」 「どういたしまして。」 だらしのない顔で感謝の言葉を述べる吉田の背後からドリンクを取りに行ってた田上が現れたら。 「また?」 「また。 パンナコッタ勧められたから、吉田にも声かけたらああなった。 面白い。」 「おもしれぇ奴。」 先を歩く嬉しそうな友人の話に花を咲かせながらまたまだ続く打ち上げを楽しんだ。 「吉田、パンナコッタ美味い?」 「美味い。 しあわせ。」 「はははっ、よかったな。」 「おうっ」

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