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第580話

「お茶飲みますか?」 おにぎりにコーヒーが合うか合わないかは個人の好みだが、途中のコンビニで購入したコーヒーを飲む長岡に、持っていたペットボトルのお茶を差し出してみた。 流石に合わなかったのか、ありがとうと手に取ると長岡は口を付ける。 「間接キス。」 にやりと笑いながら視線を流され、飲み込もうとしていたものが変なところに入り咳き込む。 この人は一体何を言うのだろうか。 「ゲホッ…コホッ、コホ…」 「おい、大丈夫か。」 「ケホ、大丈夫です…、」 背中を擦る大きな手は明らかに小学生のものではない。 そんな事、解っている。 「間接キス位でそんな慌てて可愛いな。 もっとやらしい事だってしてるだろ。」 笑いながら顔が近付いてきた。 キスをされると思わず目をきつく瞑るとガコンとリクライニングを倒され天井と長岡の顔しか見えなくなる。 時々背後を走行する自動車の排気音が聞こえるだけで静かな車内に自分の心音が響いて長岡にまで聴こえてしまう。 「っ!?」 「ほら、“なに”されるか解んだろ。 間接キス位で照れんなって。」 低くて甘い声が鼓膜を震わせる。 手にしていたおにぎりは長岡に取り上げられ、ダッシュボードの上へと置かれてしまった。 こんな所で、バレたらやばい…、 駄目なのに… 頭では駄目と解っていても拒むことが出来ない淫らな身体。   チュ え……? 「おあずけ、な。」 額に触れた唇のアツさに下半身が反応を示しそうになる。 身を起こせずにいるとニヤニヤといやらしい顔で見詰められ余計に身体が疼く。 痛くなる下腹部に勃起しかけている陰茎を意識させられ身体を丸めると声をかけられた。 「夜、たっぷりしような。 遥登の期待に添える様に頑張る。」 低くて甘くて、それでいて意地悪な声に三条は耳まで真っ赤にした。

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