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第589話

美味しいご飯に舌鼓を打ちつつ、ちらりと教師達を盗み見れば背筋を伸ばし綺麗な格好で同じ夕食に箸を伸ばしている長岡の姿を見付けた。 何時もだらりと食べているのに、教師のままの長岡に笑ってしまいそうになる。 「これ、うめぇ。」 「あ、美味いな。 三条足りるか?」 「大丈夫。 って、人参寄越すなよ。」 「バレたかー。」 わいわいと友人達と食べるご飯は美味しい。 弁当とはまた違った雰囲気なのは私服のせいか場所のせいか。 とにかく、美味いし楽しいしで三条はにこにこと箸をのばしている。 「長岡まだジャケット着んぞ。 いくら冷房効いててもあちいだろ。」 「流石に夏用だろ。 かてぇよな。 折角の沖縄なのにさ。」 「なー。」 以前スーツはオンオフの切り替えだと言っていた。 確かに自分もスーツを着ている長岡に対して“正宗さん”と恋人の名前を吐くことはない。 気を払っているのも事実だが、ビシッとしている姿は恋人とは少し違う。 勿論、どちらも格好良いし大好きだ。 でも、あの綺麗な顔を優しく歪めて笑った本当の笑顔が1番好き。 愛しくて大切で、自分だけのものにしておきたい、自分以外見ないで欲しい、色んな感情がごちゃ混ぜになって、でもそれ以上にしあわせになれるあの笑顔。 「先生らしいって言えばらしいよな。」 「それもそうだな。 長岡らしい。」 話は何時ものくだらない内容に戻り楽しく食事を済ませる。 生徒達はこれから自由時間。 楽しみだ。

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