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第590話
学年主任を探しているのだが見当たらない。
何処にいるのだろうか。
部屋に伺えば不在の様で、連絡をとってみると無人の室内から音が聞こえてきた。
携帯電話なのだから携帯して欲しい。
探す為に廊下を突き進む。
擦れ違う、友人の部屋を訪れる途中の生徒達は皆私服に着替え何時もと印象が違っている。
ジャージやそれは一体何処で売ってるんだと思うTシャツ迄様々で面白い。
「ちわス」
「こんばんは。」
中にはこんな所に来てまで単語帳やプリントをポケットに入れて持ち歩いている生徒がいるのには驚いた。
全く頭が下がる。
「長岡せんせー、なんで自販機使えないんスか」
「一階の売店利用してくださいってさっきも言いましたよ。
エレベーターは彼処です。」
「それがめんどいのに…」
めんどいと言いながらも売店に行くのだろう。
この年齢は難しい。
お世辞にも良い子優等生と言えるものではなかった自分にも覚えがある。
それに比べて遥登はおおらかと言うのか穏やかと言うのか。
感情剥き出しになるのはセックスの時位だろうか。
「こんばんは」
「こんばんは。
売店か?」
目の前に現れた見慣れた私服に声をかける。
財布を持っているし売店だろうと声をかけると頷いた。
「はい。
飲み物買いに。」
「そうか。
古川先生見掛けたら教えてくれ。
探してるんだけど見当たらなくて。」
「わかりました。」
思わず触れたくなってしまうがまだ仕事中だ。
まだ1日目だというのにこれから先が思いやられる。
エレベーターへ向かう後ろ姿を見送りながら小さく息を吐いた。
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