594 / 1273
第594話
夕食を食べ終え、楽しそうにはしゃぐ友人に断りを入れ外の空気を吸いに出ると、そよぐ風が三条の髪を靡かせる
賑やかしに点けたテレビはBGMの役目になっていた。
窓を閉めても友人達の楽しそうな声が聞こえてくる。
ホテルの小さなベランダは夜風が気持ち良い。
見える景色もキラキラと綺麗でそこに尻を着いた。
普段見る事のない繁華街のネオンが目下に広がっている。
地元ではこの季節の同じ時間はもう冷えているというのに、こちらは夜風が気持ち良いのだから不思議だ。
夜風を浴びながらぼーっとその光を眺める。
ピコン
誰だろ
優登か?
連絡を知らせるスマホに三条の顔がパッと明るくなった。
『楽しいか?』
同じホテルの何処かにいる恋人からのメッセージに、室内を気にしながら返信を打つ。
『楽しいです。
部屋にキッチンが付いてます。』
『豪華だな。
俺の部屋は付いてないぞ。』
先程撮った写真を添付するとすげぇなと返事が来た。
教師の仮面は外したのだろうか。
『目一杯楽しめよ。』
簡単なメッセージのやりとりだが、ずっと教師の長岡ばかりだった三条には凄く嬉しい時間。
ぽつり、ぽつり、静かに紡がれる言葉に笑みが溢れる。
キラキラ輝くこの景色よりずっと煌めいているのは、相手がなにより大切で愛おしい人だからだろう。
ともだちにシェアしよう!