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第594話

夕食を食べ終え、楽しそうにはしゃぐ友人に断りを入れ外の空気を吸いに出ると、そよぐ風が三条の髪を靡かせる 賑やかしに点けたテレビはBGMの役目になっていた。 窓を閉めても友人達の楽しそうな声が聞こえてくる。 ホテルの小さなベランダは夜風が気持ち良い。 見える景色もキラキラと綺麗でそこに尻を着いた。 普段見る事のない繁華街のネオンが目下に広がっている。 地元ではこの季節の同じ時間はもう冷えているというのに、こちらは夜風が気持ち良いのだから不思議だ。 夜風を浴びながらぼーっとその光を眺める。 ピコン 誰だろ 優登か? 連絡を知らせるスマホに三条の顔がパッと明るくなった。 『楽しいか?』 同じホテルの何処かにいる恋人からのメッセージに、室内を気にしながら返信を打つ。 『楽しいです。 部屋にキッチンが付いてます。』 『豪華だな。 俺の部屋は付いてないぞ。』 先程撮った写真を添付するとすげぇなと返事が来た。 教師の仮面は外したのだろうか。 『目一杯楽しめよ。』 簡単なメッセージのやりとりだが、ずっと教師の長岡ばかりだった三条には凄く嬉しい時間。 ぽつり、ぽつり、静かに紡がれる言葉に笑みが溢れる。 キラキラ輝くこの景色よりずっと煌めいているのは、相手がなにより大切で愛おしい人だからだろう。

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