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第596話

ふわふわと漂う甘い空気にここがホテルの部屋だと忘れそうになる。 手を握り合ったり触れるだけのキスを繰り返したり、中学生の様な触れ合いに三条は少しずつ甘えてきた。 嬉しそうな顔を隠すことなく見せてくれる三条に、長岡も気を良くする。 この頃、少しずつ素直になってきた様でそれが嬉しい。 口から頬、耳へと唇を滑らせるところころと可愛い声が聴こえる。 「遥登。」 「ふふ、擽ったいです。」 そんな三条の薄い腹を辿る様に手は動き、そして口付けも首へと下がっていく。 「ぁ、待ってくださいっ」 「んー?」 首筋に顔を埋めながら聴こえる間延びした返事に三条は一気に頭が冴えてきた。 「だ、め…」 「んー?」 鎖骨にあつい熱を感じ本当に駄目だと身体を捻ると、逆にベッドに押し倒されてしまった。 知らないベッドのにおいにドキリとする。 「ここ、ホテル…っ」 「わかってる。 挿入たりしねぇよ。」 「そういう問題じゃないですっ」 「しー」 子供にする様に口の前で人差し指をたてて悪戯っぽく笑う長岡。 言外に静かに、と言われている様で思わず口を覆うと四つん這いで乗り上げてきた長岡と目が合ってしまった。 長岡のその目に三条は動けなくなる。 あの目で見られたら嫌なんて言えなくてなってしまう。

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