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第610話

今日約束してたか…? いや、してねぇ筈だ …俺、寝惚けてんのか 猫の様に丸くなって隣で気持ち良さそうな寝息をたてている恋人。 あたたかな体温も気持ち良さそうな寝息も現実のものだ。 確認の為にスマホに手を伸ばすとメッセージが届いていた。 昼過ぎに連絡きてたんだな まったく気が付かなかった どんだけ寝てたんだよ 『会いに行っても構いませんか』 構わないに決まってんだろ もぞっと動いて顔を隠した三条の髪を梳きながら頭を撫でる。 さらさらと指から溢れる髪が顔にかかると擽ったそうに口角が上がった。 「遥登。 はーる。」 「…んー……あ、正宗さん…、起きた」 「はよ。 起きたよ。」 寝惚け眼が自分をとらえるとふにゃりと笑った。 可愛い 愛おしい 愛してる 花笑み。 文字通り花が咲くように笑う、その笑みに胸がいっぱいになる。 たまんねぇな 「おはようございます。 すみません、寝ちゃって…。」 寝起きの甘い口調に長岡の口角は上がりっぱなし。 目元を擦る細い指を掴んで手のひらにちゅーっとキスをする。 「良いよ。 ちゃんと部屋に入ってくれて嬉しいし、起こしてくれれば良かったろ。」 「ん、お疲れかなって。」 「遥登の顔見たら疲れなんて吹っ飛ぶよ。 おいで、部屋があったまるまでこのままな。」 ほんの少し意地悪をしたくもあるがそれはまたあとからでも良いかと、細っこい身体を自分の方に引き寄せた。

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