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第612話
痕、キスマークだけだと思ったらそうではなかった。
キスマークで彩られた身体、その至るところに歯をたてられている。
肩、二の腕、胸、脇腹。
真面目そうな三条からは想像出来ない、いやらしい痕にまみれた身体は普段制服に隠れている。
その淫らな身体を知っているのは、三条本人と長岡だけ。
「…い"…ッ」
三条が痛みに呻いても長岡は許さない。
ギリギリと突き刺さる犬歯に噛み千切られそうで涙が滲んできた。
「…ぅ"、ぅーッ」
しっかりと着いた痕には血が滲み、じんじんと熱を孕む。
痛みさえ快感に変換出来る身体が孕むのは熱だけではない。
「ァ、ぁ…」
「くっきりついた。
やらし。」
満足げに笑うと長岡の手が下に伸る。
金属音をたてバックルを外しはじめた長岡に三条は慌ててそこ隠した。
「そこは…っ」
「遥登、手。」
首否するがそんな簡単に許してくれるはずもなく、腕を捕まえられてしまう。
細身だがしっかりと筋肉のついた長岡に棒の様な腕力では勝てない。
押しても引いてもびくともしない腕に男を感じる。
がっちり掴まれた腕はもう自分の意思では動かせない。
観念してそのままその場所で手をとめると、良い子だなと耳元でリップ音が聴こえた。
チュ、チュ…ッ
際どい部分にまでマーキングされ、荒くなる呼吸に甘さが混じっていく。
やばい…
勃ってるのバレる
恥ずかしい
脚の内腿から付け根へと這う熱い舌に陰茎は頭を擡げていた。
「したい?」
「それ…は、ですね…」
伏せられた顔を覗きながら言うと薄く唇が開いた。
チロっと見える舌。
微かに震える睫毛。
無意識にやらしい誘い方をするようになった恋人の頬を指で撫でる。
ぴくっと肩が震えたのは期待だろうか。
そうであれば良いなと更に撫で追い撃ちをかけた。
「俺は、“遥登”としたい。」
「……狡い」
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