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第618話
「はー、また今年も彼女出来なかった。
くりぼっちかよ。」
田上の一言にたまご焼きを口に運ぶ三条の手が止まった。
吉田もいちご牛乳に挿したストローを銜えようとしたまま田上を見る。
やっと終わった午前の授業。
待ちに待った昼休み。
今日もぎっしり詰まった弁当に三条は舌鼓を打っていた。
目の前で口を開けたまま止まっている友人も珍しく弁当を持参している。
「今年こそ野郎だけのクリスマス会するか?」
「田上大丈夫かよ。
また風邪とか勘弁だぞ。」
「大丈夫だわっ。」
クリスマスか
今年のクリスマスは確か月曜
正宗さんは仕事だしどうしようかな
たまご焼きを口に運びながら考える。
運良く一緒に過ごせた去年。
だけども、今年はそうもいかないだろうか。
別に何がしたい訳でもない。
ただ、一緒に、隣にいたいだけ。
贅沢な悩みだな…
「今年のクリスマスって…月曜だよな。
やるなら土日の方が良いか?
あ、でも冬休みだし関係ないか。
…三条、聞いてる?」
「聞いてるよ。
吉田の言う通り風邪ひくなよ。」
「三条くんがその美味しそうなカツ分けてくれてら風邪ひかないと思うなぁ。
ちょーだいっ」
「デニッシュ洋梨になったしな。
いちごとなら交換したんだけど。」
にやりとデニッシュを指しながら言えば田上はさっとパンが入った袋を引き寄せた。
…でも、来年はクリスマスどころじゃないだろうし
進路だってどうなるか分からない
本当、どうしよう
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