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第619話
欠伸を噛み殺しながらも口を手で覆うと隣からくすくすと声が聞こえた。
「夜更かしですか。」
「すみません…。
しっかり寝たつもりなんですけど。」
「いえ、若いから沢山眠れるんでしょう。
羨ましいですよ。」
穏やかに笑う先輩教師は朝方早い時間に目が覚めてしまうのだと話す。
確かに、アラームをかけなければいくらでも眠れる。
半日でも余裕だ。
コンビニで買ったパンをかじりながら亀田が淹れてくれたコーヒーで手をあたためる。
マグカップを握り平から伝わる熱でかじかむ指先は解れてきた。
次の空き時間、冬休みの課題は他の先生方が担当でクラス事を片付けられる。
少しゆっくりと昼休みを過ごしても良いか。
胸ポケットから恋人から貰ったボールペンを取り出すと付箋にやる事をメモ書きし、ノートパソコンの隅に貼った。
カチッと芯を戻すと胸ポケットに差し直す。
修学旅行の写真整理に庶務、レターケースを見に行って…
嬉しい事に今日は早く帰れそうだ。
2つ目のパンに手を伸ばしながら何気無く書き込みがびっしりの卓上カレンダーを見るともう1ヶ月もせず冬休み、そしてクリスマス。
恋人と過ごす2回目の季節がやってくる。
ただそれだけで嬉しくなるのだから自分も随分とお手軽になったなと小さく笑った。
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