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第621話

村上は土産が不服なのか、長岡の取り皿にからあげの付け合わせ野菜ばかりを寄越しはじめた。 悪友の変わらぬ癖に溜め息を吐くとからあげをひとつ口に運ぶ。 「はいはい、これもやるよ。 グラスだから割るなよ。 両手で持て。」 「グラス…! って、沖縄って言ったら泡盛だろ!」 「土産にケチつけんのかよ。 あと、お前下戸だろ。 何時も関川に手間かけさせてんだから控えろ。」 グラスを大事そうに膝に乗せながら泡盛!泡盛!と訴える。 本当に酒癖が悪い。 下戸のくせにアルコールが好きな村上は潰れては関川から送り届けてもらっていた。 2人のマンションは近いが酔っ払いの介抱は大変だろう。 何度か自分も手伝うと申し出たが、マンションが逆方向な為関川から断られていた。 最初の一杯位と思ったがやっぱり飲ませるべきではなかった。 村上は泡盛美味いよな?と関川に絡むがすぐに撃沈を受け凹むことになる。 「雅紀くん最近太ったでしょ。 重いんだけど。」 「関川は優しいままでいてくれよ。 なぁー、なぁー」 少量しか口にしていないのに既に厄介者になりつつある友人を目の前に、明太子を巻いたあつあつのだし巻きを食べる。 ビールは冷たくとも、つまみはあったかいものの方が嬉しい。 「関川が長岡化した。 優しい関川を返せ!」 「うっせぇよ。 酔っぱらい。」 楽しい悪友とも今年はもう会う機会はなさそうだ。 次は新年を迎えてから。 だから、存分に楽しんでおこうと会話に加わった。

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