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第622話

すっかり雪化粧した…いや、これが化粧なら随分と厚化粧だ。 それほどに降り積もった雪山を目の前に校舎へと向かう。 駐車場から校舎へと抜ける近道の中庭もすごい雪で覆われ、先を歩いた人で出来た道を通りなんとか校舎へと入った。 …スーツ濡れた 気持ち悪り 乾かしてぇ なす術などないがジワジワと冷たさを広げる滲みに溜め息が漏れそうだ。 生徒ならジャージに着替える事も出来るがそういう訳にもいかない。 そもそも長岡は替えの服を常備していない。 だけどもタオルはあったはず。 「はーざいまーす」 「おはようございます。」 この寒い中朝練にせいをだしていたのかうっすら汗をかいたジャージ姿の生徒は元気に挨拶をしてくる。 腕捲りをして渡り廊下を歩く姿は見てるこっちの方が寒い。 職員玄関で靴を履き替えれば靴下まで湿っている様な気さえしてきた。 「はよーす。」 「おはようございます。」 「三条、田上、おはよう。 ほんと仲良いな。」 「でしょ。 先生も友達は大切にしないとっすよ。」 準備室へと向かう階段で教え子にばったり出会せば律儀に頭を下げ挨拶してきた。 高校からの仲とは思えない2人にそう声をかければ手厳しい返答が返ってくる。 苦笑するしか出来ない長岡を心配そうに三条が振り返る。 大丈夫だと口角を上げれば三条も小さく笑って田上を追い掛けた。 生徒にしてみればやっとむかえた休業式。 短くとも休みは休み。 雪が降る外とは違い校内の雰囲気もどこか明るくそわそわと浮わついている。

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