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第624話
あー、と大きく口を開けぱくっと食い付くと割れたそこから美味しそうな湯気がたつ。
「うんまー。
今日は甘い気分だったからあんまんにしたけど大正解だな。」
「吉田、一口交換しよ。」
「ん。
辛いのの後の甘いのうめぇ」
「これ、激辛って言うか舌痛い…」
白い息を吐きながらわいわいと雪を踏み締めながら学校脇を通りかかる。
鼻も耳もじんじんと痛むがあたたかな中華まんを持っているお陰でかじかむ指先はあたたまってきた。
「今年…じゃなくて来年の初詣どうする?」
「知佳ちゃんとの縁結びお願いに行く。
縁結びのご利益ある所行こう。
な!」
「はいはい。
で、具体的にどこ?」
「さあ?
調べるから待って。」
印刷したばかりのプリントを持って寒い廊下を歩いていると、真っ白い外から楽しそうな声が聴こえてきた。
聞き慣れたら声に窓の外を見下ろすと見馴れた3人組。
ふと肩の力が抜ける。
あぁしてると年相応だな
あ…
楽しそうにはしゃぐ3人の上の電線から雪が落ち、見事に三条の頭を真っ白くした。
マフラーの隙間から制服の中にも入ったのか三条はジャケットの裾を扇ぎ、友人達は楽しそうに笑っている。
ははっ
飽きねぇ
長岡先生の中々見ることが出来ない笑顔は誰にも見られる事なく外を向いたまま楽しそうに笑う教え子を眺めていた。
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