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第625話

しんしんと降り積もる雪も量が増え、冬休み初日。 変わらず三条は呼び鈴を鳴らした。 「おはよ。 寒かったろ。 早く入りな。」 「おはようございます。 あの、お邪魔します。」 冬のにおいを纏った三条は顔の半分をマフラーに埋めていた。 都会じゃホワイトクリスマスなんて言うのだろうが、北国ではそんなお洒落なものではない せめて、パウダースノーならもう少しロマンもあるのに降るのはベタ雪だ。 靴を脱ぐのもそこそこにコートを脱がすとあたためておいたリビングへと入れた。 コートとマフラーをハンガーにかけ、手を洗う三条の隣でお湯を沸かしながら飲み物を漁る。 「あー、そうだ。 月曜半休もらったんだけど、なんか予定あるか?」 「え?」 すごく驚いた顔をした三条に紅茶で良いか聴くとはっと正気に戻り頷いた。 ここしばらく飲んでなかった紅茶のパックを破り丁度よく沸いたらお湯と一緒にマグにいれると、爽やかに芳醇なかおりが立ち込める。 「有給使ってねぇしたまには良いだろ。 お陰さまで授業もねぇし。」 「あ…」 「俺の為の休みだけどな。 遥登が付き合ってくれたら嬉しいんですけど。」 「よ、予定はないですっ。」 あくまでも自分の為。 そう言えば三条も申し訳なさそうな顔はしない。 色の出たマグに砂糖を落とすと三条に手渡す。 なにか言いたげなその様子。 なんとなく、言いたい事は解る。 自分も、そうだと良いなと思う事。 「泊まる?」 その言葉に三条はこくんと頷いた。

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