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第626話
ソファに座り、後ろから恋人を抱き締める。
その恋人は、最初こそそわそわしていたが暫くすると諦めたのか大人しく脚の間に収まっていた。
セーター越しにもその骨と皮だけの身体が解る。
自分よりあたたかなその身体をしっかり引き寄せた。
「クリスマスなんか欲しいのねぇ?」
「クリスマス?」
くりくりとした目がきょとんと後ろを向いた。
密着していた腹と背中が離れ寒い。
離れんなと腹に回した腕に力を込める。
なんにしようか考えるのも楽しいが、手っ取り早く確実な方法で聞いてみた。
「そ、遥登にお強請りされてぇなぁ。」
「欲しいものはありません。」
「物欲ねぇな。」
「正宗さんがいてくれれば何にもいりません。」
さらりととんでもない発言をした本人はにこにこと笑っている。
飾らない姿を見せてくれるのは嬉しいが、無自覚に誘うような事を言うのは考えものだ。
「俺がいれば良いのか?」
「はい。
あ、正宗さんもクリスマ……え?」
やっと言葉の意味を理解したのかどんどん顔が赤くなっていく。
こんな風に赤くなるんだなとじっと見詰め感心する長岡に三条は違うと何度も首を降る。
「あ、いやっ、ちがっ!…わないです、けど、忘れてください…っ」
逃げようと腰を浮かせる三条を長岡は逃がさない。
しっかりと肩を抱くとその場に固定した。
「俺がいれば良いのかぁ。
嬉しいな。
な、遥登。」
「意地悪です…。
忘れてください…。」
ちょっと発言をつつくと、とうとう顔を隠してしまった。
何時までも初な反応にご機嫌な長岡は三条の髪を掻き乱しながらわしゃわしゃと撫でる。
「意地悪じゃねぇよ。
本当に嬉しいんだって。」
それは長岡の声からも解る。
嬉しいなんて言われて三条も満更でもない。
「何時もと同じだけど、家ですごそうか。
遥登いるなら鶏肉食いてぇな。
あとケーキか。
ケーキ、何が好き?」
「……チョコレート」
「じゃ、それ食って過ごそうな。」
膝に顔を埋めながらもしっかりと頷く三条の頭に顎を乗せてクスクス笑う。
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