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第637話

玄関まで見送りに来てくれた三条は寝ていた時のままの格好で膨れている。 着替えようとした三条を制しもう少し寝てろと言うも長岡を気にしてか起きていると言い張るので、せめて仕事に行ってる間だけでもふとんに居ろと言い聞かせたらこの調子だ。 案外頑固なところがある三条はそんなのは不公平だと言うが、そもそも受け入れる側と受け入れてもらう側とでは体力の消耗も違うのだから不公平とかそういう問題ではない。 三条も男。 細いと言ってもスタミナもある。 倒れる事はないと思うが、少しでも休んでいて欲しいのは本音だ。 靴を履き、ぽんと頭に手を置くとやっと此方を向いた。 「膨れてるはるちゃんも可愛い。」 「…階段、滑らないでくださいね。」 「気を付けるよ。 ふとんあっためて待っててな。」 わざとらしい言い方のその裏に隠れた言葉の意味を読み取ったのか下を向いてしまった。 もう少し構いたいがそろそろタイムリミットか。 顔を覗き込み、真っ直ぐに目を見る。 「行ってきます。」 「いってらっしゃい。 気を付けてください。」 玄関ドアを開け踏み出そうとした瞬間、コートの裾を掴んで引き止められた。 振り返ると眉を下げた三条が何か言いたげに此方を見ている。 「どうした?」 「あ…と、ふとん、あっためて待ってますから……、早く帰ってきてください…」 …1日休みとっときゃ良かった 長岡は後ろ髪引かれる思いで玄関を出て行く事になった。

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