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第640話
三条が目覚めると目の前に赤茶けた髪があった。
手を伸ばしてその人のコートを握ると、綺麗な顔が振り返る。
一刻も早く会いたかった人の優しい笑みに胸がきゅぅっと甘酸っぱくときめく。
「はよ。
ちゃんと寝てたんだな。
安心したよ。」
「おかえりなさい。
あの…」
チゥ、
ぐいっと身を伸ばして頬に口をくっつけると頬は随分とあたたかい。
帰ってきてから時間が経っているのだと理解した。
「サービス良いんだな。
じゃ、俺からも」
「ン…」
2度3度と触れるだけのキスを繰り返す。
4度目に唇を舐められ口を開けろと催促された。
薄く開いた間から侵入してきた長岡の舌が三条の口腔内をぬるぬると動く。
触れ合う粘膜が気持ち良い。
「ぁ…」
「また息止めて。
何時になったら慣れるんだよ。」
笑いを含んだ声に恥ずかしくなる。
言外に“何度もした”と言われているのは解っている。
だけど、何度もしても初めての様な反応しか出来ない。
唇が離れると頬を捕まれたまま額にもキスをされた。
でろでろに甘やかすキスに耳まで赤くすると長岡は楽しそうに笑う。
この顔好き
ぽわっと上気する頬を親指で撫でられうっとりとした心地に身体中がしあわせに包まれる。
「飯食うか。
食い終わったらゆっくりしような。」
「はい。」
早く行くぞと手を引かれ、未だコートを羽織ったままの長岡と一緒に炊事場へと向かった。
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