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第643話
あんなに降り積もった雪は随分と溶け、道路も顔を出した。
年末年始も変わらず運行してくれるバスに感謝しつつ歩き慣れた道を急いだ。
階段を上がり、目的の部屋まで来るとまずは一呼吸して呼吸を整える。
何時も通り呼鈴を押すとすぐにその扉は開いた。
「あけましておめでとうございます。」
「おめでとうございます。
堅苦しい挨拶は中に入ってからな。
はい、おはよう。」
朝の挨拶と共に表情を緩める長岡に三条は何時もドキドキする。
シンプルなシャツがより端正な顔立ちをより引き立てていた。
グイグイと腕を引かれ室内に入ると、あたたかな室温に冷えた指先が溶けていく。
漸く末端にまで血液が回りだしたようだ。
コートを脱ぐと横から奪われハンガーに通しかけてくれる。
本当に格好良い。
通されるままに炊事場で手洗いをしていると後ろに長岡がやってきた。
「今年もよろしくな。」
「え、手洗ってる時に言いますか。
流しますから待ってください。」
「本当律儀だな。」
手を洗う三条におぶさり体重をかける。
潰さない様に気を付けながらぐーっと密着した。
外気に晒された髪が冷たい。
うなじに顔を埋め、冬のにおいが混ざる清潔なにおいを嗅ぐ。
「遥登のにおい。」
擽ったさに身を捩ると顎を掴まれ後ろを向かせられた。
すぐ目の前にある唇が弧を描く。
咄嗟にキスされるんだと目をきつく閉じると、予想だにせずそれは鼻先に降ってきた。
「期待してくれた?」
「ーっ!?」
悪戯気に言われ悔しいが図星だ。
うんともすんとも言えずにいると、裾から大きな手が侵入してきた。
肉のない腹を上へと向かい、まっ平らな胸を撫でる。
反対の手はパンツの上から股間をまさぐりだした。
すっかり長岡の手によってそれが快感だと教え込まされた淫らな身体は喜んで反応を示す。
親指と人差し指で摘まみ左右に捻る。
かと思えば、爪先で掻いたり乳輪を優しくなぞったり、ぞわぞわと肌が粟立つ。
「勃ってきた。
かわい。」
「正宗さんっ、こんな場所じゃ…っ。」
「んー?
何処なら良い?」
「それは…」
口ごもる三条にうなじを舐め上げる。
「言わねぇなら今日は此処でする。
立ったままな。」
中途半端に煽られた身体を持て余す今の三条に、三条の好きな低くて甘い声で囁けばもうこっちのものだ。
「……べ、ッド。
寝室で、…お願いします」
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